
金融機関と円滑な関係強化のため知って得する情報(1)
企業の債務者区分と3年目を迎えた金融機関の金融円滑化法終了後の対応
企業決算について
日本の企業決算は、3月と9月に集中しています。金融機関では、3月決算の融資企業において、概ね7月8月には、「債務者区分」の改訂を終えます。この結果、皆さまの会社に対する金融機関の対応が、変わる場合があります。平成27年度から、多くの有利子債務を抱える企業においては、金融庁の指導もあり、対応が厳しくなるかもしれません。
債務者区分について
経営者の皆様は、「債務者区分」をご存知と思います。金融機関は、融資企業には決算終了後、必ず決算書の提出を求めています。これにより「債務者区分」の改訂を行います。この「債務者区分」は、融資先企業には開示しません。極めて厳しい部内秘資料です。
金融機関は新しい「債務者区分」によって、その後の、行員の担当配置、融資条件の設定や対応を変えます。このため、融資を受けている企業経営者は、自社の「債務者区分」を常に意識する必要があります。
債務者区分は、次のように区分されています。
「正常先」「要注意先」「要管理先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」です。「要管理先」は「その他要注意先」と「要管理先」に区分される場合もあります。一般に「要管理先」以下は不良債権と言われます。金融機関は、「要管理先」以下の企業に融資をする場合、段階ごとに高い比率の貸倒引当金を計上しなくてはなりません。金融機関の利益圧迫要因となるため、債務者区分が下がった企業の融資は厳しくなる、融資が出来ない、状況によっては回収に動くなどの可能性が出てきます。
ところが、この債務者区分の基準は、金融機関毎に違いがあります。メガバンクと地銀・信用金庫では大きな違いがあると言われています。また、メガバンク同士、信金同士でも基準が違っている。また、経営が良好な金融機関と厳しい金融機関でも査定基準の違いがあると言われています。
このため、いくつもの金融機関と取引をしている企業は、同じ決算書でも金融機関毎に「債務者区分」が違うということが現実的におきます。これは「A行は協力的だが、B行は難しい。」などの対応の違いに現れます。これは、金融機関毎の債務者区分の違いに起因していることを理解して、対応する必要があるでしょう。評価が悪い場合どのようにしたら良いか、積極的に聞き出して改善することも必要です。
金融円滑化法に関して
そこで、金融円滑化法に関してです。平成21年12月から平成25年3月まで、利息の支払いだけで、元本返済を猶予(リスケ)する法的措置が行われました。適応企業は30万企業とも言われます。本来、正常債権の「要注意先」がリスケを行うと、不良債権の「要管理先」に下がります。しかしこの法律で金融機関の扱いは、「要注意先」のままになり、金融機関は貸倒引当金の計上が不要になります。この法律により、適応企業は資金繰りに余裕がでました。申請すればどの企業でも適応が受けられます。ところが元本の支払いを猶予している間に経営改善を行うはずが、なかなか進まず、単に廃業や倒産を延命している、との批判が出ていました。
国は、金融円滑化法終了後、適応企業の経営改善を支援するため、経営革新等支援機関(認定支援機関)の制度を設け、約400億円もの補助金を用意して、経営改善計画策定支援事業を推進しました。また、金融庁も金融円滑化法が終了してもすぐに手荒なことはしないと、猶予処置をしてきました。しかし終了後3年を迎え、いよいよ正常に戻す動きが加速しています。金融庁は、平成27年度から政策転換をする報道が出ています。
このため、現在リスケを延長している企業や折り返し融資を望んでいる有利子負債を多く抱える企業は、規模に関係なく経営改善計画の策定を行い金融機関の同意を得ることが必要です。3月決算企業は、今後待ったなしの状況になる可能性があると言えます。
まとめ
『平成27年4月10日(ニッキン)金融庁・中企庁 抜本計画へ移行を促す 暫定リスケ、既に3000件金融機関交渉困難も』
説明が長くなりましたが、今後金融機関は、金融円滑化法施行以前と同じ状況に戻るということになります。このため、金融機関との取引においてはメイン銀行が重要になってき来ます。また、金融機関との融資交渉において、積極的に金融機関の支援を受けるたに、会社の経営状況を、担当行員によく理解いただく必要があります。この件については、次回報告いたします